「あなたの目はごまかせないわ」
先日、あるフレンチレストランにて
「Theうんちく男」に遭遇しました。
女性相手に
「トゥールダルジャンって知ってる?
フランスのポール・ボキューズっていう三つ星レストラン知ってる?
そういえば神楽坂の××、あそこもけっこうがんばってるよ。
まあ8000円のコースにしてはまっとうな料理を出すよね。
こないだあそこでマルゴー頼んだんだけどさ・:・:」と延々と続く。
連れて来られたらしい若い女性たち(おそらく会社の部下か?)が
「すごーい!」とか
「えーどんなお店なんですか?教えてください」
なんて言わないもんだから…というか
あからさまにつまんなそうなリアクションしかしない
もんだから…自慢話がエスカレートしてしまっているんですね。
そうはいっても、この手の男の場合
「すごーい!」
と言えば言ったで
さらにエスカレートするだけなのでタチ悪い。
ついに彼は
「今日のフォアグラの焼き加減はいまいちだね」
と言い始める始末です。
結局彼は何か言いたいのかというと
「オレの目はごまかせないんだぞ、そんじょそこらのやつらとは違うんだ」
ということなのです。
「フランス料理の目利き」
であることをみんなに認めてほしいわけです。
一見お店に対する批判や批評をしているように
見えたとしてもじつは
「それぐらいのことがわかってしまうオレ」を
見せることが動機の大半であることが多いのです。
その手の男性には
「○○さんぐらいフレンチに詳しいといろんなことがわかってしまうんですね」
「○○さんの目はごまかせませんね」
と言えば大喜びです。
尊敬と同情のまなざしで
「そんなに通になっちゃうと私たち素人みたいに単純に楽しめなくなったりしないですか?」
なんて質問をしたらさらに破壊力抜群です。
はち切れんばかりのプライドエネルギーが
彼の全身を駆けめぐり金色のオーラが彼の背後に見えることでしょう。
気をつけてください。
そんな彼が
「○○店は最高だよな」
などと言ってきたとき
ついうっかり
「そうかな私は接客がイマイチだと思ったけど」
なんて言ったら大変です。
ためしに実験してみてほしいのですがすごい勢いで
「おまえの目こそ節穴だ」
と言わんばかりの反論をしてくるはずです。
目利きのプライドが傷つけられてしまったのです。
そんなふうに議論になってしまって悪い方向に行きそうになったときには
「私もまだまだ甘いなあ」
「○○さんには勝てない」
「もっと勉強しなきゃ」
と最後に負けたフリをしてあげるといいでしょう。
負けた「フリ」でかまわないのです。
男性は犬がおなかを見せた犬を攻撃しないのと一緒で
負けを認めた相手には寛大になります。
「そうかあ、そういう意図があってああいう接客なのね。気づかなかったわ」
なんて言ってあげると
「いや、まあ、たしかにもっと笑顔の接客があってもいいよね」
とコロッと変わったりするものです。
だから気づきにくいかと思いますが男性は目利きであることに
プライドをかけている場合も多いので要注意です。
……と、ここまで書いてきて、ふいにいま気づきました。
私はテレビを見ながら
「この芸能人、絶対に整形だぜ」
と得意げに言うことが多いのですが、そのたびに
「よくわかるわね!あなたの目はごまかせないわね」
と言ってくれていることに。